【 レポーター 月夜桃花 】

第一話
今回の企画「…日本の自然探索…」のレポーターに抜擢された加納早紀は今年入社した22歳になったばかりの新人であった。
TOKIOTVに就職してから数ヶ月は、雑用に近い仕事ばかりの日々であったが今回の企画のレポーターに白羽の矢が立ったことをとても喜んでいた。
もともとニュースキャスターに憧れて、この業界に飛び込んだ早紀だったのでその夢までの道筋が見えたことに満足をしていたが、喜んでいるもう一つ大きな原因は自分の同期社員の殆どがまだ雑用の仕事しか与えられていない事に対しての優越感があった。
(やっぱり、私は他の新人達とはちょっと違うのよねぇ……)
上司に呼ばれた早紀は場所、日程、同行スタッフについての説明を受けた。
「失礼しまぁぁす」
早紀は頭を下げながら編集長室をでた。
(場所はともかくとして、なんであんな親父たちと過ごさなくちゃならないの…)
早紀は自分の記念すべき初レポートのスタッフが自分の倍以上の歳の親父たちで構成されたことに納得がいかなかった。
日焼けして脂ぎった顔で体中が汗臭そうなその連中の姿を早紀は時折見かけ心のなかで馬鹿にして眺めていたのだった。
「みんな、アウトドア専門のクルーだから安心して…」早紀はさっき上司が言ったセリフを思い出していた。
(まぁ…しょうがないか)
早紀は持ち前の気持ちの切り替えの早さで割り切ると自分のデスクへと足を向けていった。
8月某日早朝、早紀は男性スタッフ三人と一緒に現地に向かった。関越自動車道を降りて長い時間走ったのち車はやがて山道を奥へと進んで行った。
「ここから先は、車では進めないな…」
カメラマンの尾田がつぶやいた。
「そうですね…それではここから歩きですね」
助手の土居は後ろの座席に向かって言った。
「それじゃぁ…用意しますか。早紀ちゃんも準備はじめてくれる?」
須崎は早紀に語った。
「……はい。……」
早紀はブスッとした顔で答えた。スタッフの三人は、車中での早紀の態度に少し頭が来ていた。
その無愛想な表情といかにも、自分たちと一緒にいるのがつまらないといった態度に腹がたっていたのだった。
(少しぐらい、可愛い顔をしているからって…天狗になるなよな…)
お互い言葉には出さなくても三人ともがそう感じていた。
つづく