【 レポーターU 月夜桃花 】

第一話
TV画面の端にある時計が12:15になりそれまで流れていたニュースの画面からどこかの漁港の風景に切り替わった。
明るい軽やかな音楽とともに一人の若い女性がTV画面に現れ明るい声で挨拶をした。
「みなさーん…こんにちは!!」
「『こんにちは桜王子』でーす」
「私は今、桜王子県の南にある桜王子漁港に来ていまーす。」
可愛い笑顔が印象的な若い女性は白いTシャツにジーンズといった姿で少し離れた場所にいる地元の漁師と思わしき人物に話し掛けようと移動していった。
彼女の名前は森川美花…ローカルTVの桜王子TVの人気レポーターである。
今年入社の新人である彼女はそのルックスの良さと体から滲み出す素直そうな性格が男性視聴者に大変うけて桜王子TV女性レポーターの中では抜群の人気をほこっていた。
昼時の2時間、他チャンネルのライバル番組を押しのけて視聴率はかなりあげていた。
特に男性の多い職場の食堂や休憩室ではこの時間必ずといって良いほど桜王子TVにチャンネルが合わされ美花の22歳の割に少し舌足らずな声が画面から流れていた。
「今日はここの漁師さんの船に一緒に乗せていただいてレポートしたいと思いまーす!」
美花はカメラを見ながら移動して行った。
桜王子漁港の事を説明している美花の声に混じって男の声が聞こえていた。
「だから無理だって言ってるんだよ…急に言われても…」
「お願いしますよ…頼んでいた方が急に怪我をしてしまって…」
「だから…わしの船には大勢乗れないって…」
「あの娘とカメラマンだけで良いんです…お願いしますよ…」
「設備も足らないよ…それでも良いのっ…」
「船と海の絵さえ撮らせてもらえば良いんです。」
画面には入らないが男達の言い争ってる声をマイクがひろっていた。
「こんにちは!!」
何も知らない美花はTVスタッフともめている作業服の男性に声をかけた。TVスタッフはカメラから逃げるように消えていった。
「……。」
画面に登場した男は機嫌悪そうに美花を見ていた。
「こんにちは!」
美花は少し不安げな表情を浮かべたがTVカメラの前という事で無理やり笑顔を作った。
「………こんにちは」
男はカメラの後ろから手を合わせて必死に頼んでいるスタッフを見て低い声で答えた。
「今日は今がもっとも旬な地元の魚、スナウオの漁を見せていただけるんですよね?」
無愛想な男はTVに映っているのも興味なさげに頷いた。美花は少し困った表情でカメラ後ろにいるディレクターの顔を見た。
つづく