【 放課後の憂鬱  JACK 】





  第十三話


  第3章「もう一人の藍」(1)


 高科にしっかりと抱きしめられ、藍は複雑だった。 少し前までの出来事に脅えて震えている自分と、抱きしめられて胸を締め付けられるような何かを感じている自分が存在していた。

 自分の中に、今まで知らなかったもう一人の自分がいる・・・それまで経験したことのない、奇妙な感じだった。 そして、今はただ何も考えず、この大きな胸の中に自分をうずめてしまいたい、そんな気持ちが膨らんでくるのだった。

「藍ちゃん、このままじゃ風邪ひいちゃうから着替えた方がいいよ。」

 高科の言葉で、藍は我に返った。

「えっ、あっ、ごめんなさい・・」

 藍は高科から離れた。

「僕は外で待ってるから、早く着替えてしまいなね。あっ、だいじょぶ、のぞいたりしないから!」

 高科はそう言って藍に微笑みかけた。

 藍は少し笑顔を取り戻し「・・はい。・・待っててくださいね。」と返事をした。 高科はドアをあけると、外に出ていった。

 藍はぐっしょりと濡れた体操服を自分の肌から引き離すように脱ぎ捨て、無造作に丸められたブラジャーを着けた。ブルマーも下ろすと、そのままスカートを穿こうとした。しかしその下につけていたパンティも濡れていたため、すこし手を止め考えた。

 結局、濡れたパンティを穿いているのが気持ち悪く嫌だったので、思い切ってパンティをおろすと何も着けずにスカートを穿いた。まだ湿っている股間がすーすーとして、妙に頼りない雰囲気だった。

 藍は着替えが終わると、そばにあったビニール袋に濡れた体操服と下着をそそくさと詰め込み、ドアを開け高科の所へ向かった。

 高科は廊下から窓の外を眺めていたが、着替えの終わった藍にすぐ気が付き「あ、終わった? じゃあ帰ろうか。送っていくから。」と声をかけた。

「おねがいします。」

 藍は素直にそう答えて、高科のすぐ横に立った。

「髪もまだ乾いてないね。」

「え、あ、うん。」

 藍には、自分が意外だった。あんなに酷いことをされたすぐ後なのに、高科になにを話そうか、そんなことしか考えていなかったから。

「ごめんな、こんなことになって・・」

 高科はそんな言葉を繰り返した。

 藍は「気にしていない」というのも変な気がしたので、曖昧な微笑みを浮かべただけだった。しかし頬がかすかにあからんでいた。

 家の近くまで高科といっしょに帰ってきた時、藍が突然「あっ、ここまででいいです。ありがとうございました。」と高科に言った。藍には、家の前まで高科に送ってもらうのが何となく恥ずかしかったからだ。

「え、家まで付いて行くよ?」と高科が言ったが、「・・・恥ずかしいから・・・ここまででいいです・・」と藍は言い張った。

 高科はそれ以上はくどくなると思ったのか、藍の顔を覗き込むようにすると「じゃあ、ここで。藍ちゃん、また明日、ね?」と確認するように言った。

「・・・はい。だいじょぶです。またあした。」

 藍が返事をすると、高科はちょっと手を振り、すぐに学校の方へ戻っていった。

 立ち止まって見送っている藍に、高科は一度も振り返らなかった。藍にはそれが、少しもの足らないような気持ちだった。



 つづく

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この官能小説は ひとみの内緒話 でも掲載しています。

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